インフレの期待が高まっていますが、前回取り上げた”エネルギー”のセクター以外にインフレの恩恵を受ける株って何ですか?
昨夏から、米国(アメリカ)の長期金利(10年債利回り)は上昇トレンドにあります。
Aさんが言うとおり、将来の米国(アメリカ)の景気回復と物価の上昇-いわゆる『インフレ』がマーケットで強く意識されているからです。
この点は下のチャートを見れば一目瞭然です。
・インフレと米金利のチャート
『コア個人消費支出』は、米国(アメリカ)の中央銀行であるFEDが注目しているインフレ指標です。
上のチャートを見るとー
昨年の5月
コア個人消費支出が上昇
昨年の夏
長期金利が遅れて上昇
- インフレと長期金利の関係
- 金利上昇の恩恵を受ける株式
- 二種類のインフレについて
- 米株の投資を考えている人
- 銘柄の選択で迷っている人
- 投資の経験がない / 浅い人
- 金利上昇の恩恵を受ける株式に投資をしよう
- それは”銀行株”である
- 銀行株は先を見越してすでに上昇し始めている
①景気低迷の局面
1:企業や個人が資金を借りる需要が縮小する
2:しかも金利は低下のトレンドにある
3:”利ざや” が収益となる銀行にとって厳しい状況にある★重要!②景気底入れの局面
1:未だに企業と個人の資金需要が低迷している
2:しかし政府や中央銀行による経済政策の効果が徐々に表れる
3:金利の低下トレンドに陰りが見え始める③景気回復の局面(初期)
1:企業の活動と個人の消費が徐々に拡大していく
2:それにともない資金の需要が徐々に増える★重要!
3:資金の需要増に連動して銀行の貸し出しも増える★重要!
4:景気の回復を意識して金利が上昇し始める④景気回復の局面
1:銀行から貸し出された資金が投資や消費に回り景気が回復する
2:景気が回復するとモノやサービス価格の上昇する
3:インフレを意識して金利の上昇が加速する
4:資金需要の拡大と金利の上昇が銀行の ”利ざや” 収益を拡大させる★重要!
という順になっていることがわかります。
この動きは、インフレの動向が米金利のトレンドを左右していることを示しています。
今月、米国(アメリカ)の議会は1.9兆ドルという巨額の財政政策を可決しました。
この効果が波及すれば『景気の回復 → インフレ→ 金利の上昇』というトレンドはさらに加速するでしょう。
そう、これからアメリカの社会はー
ポイント
インフレと金利が上昇する時代
を迎えます。
そんな時代に投資すべき米株とは?
今回は、全3回シリーズの2回目となります。
今回のテーマ
インフレと金利が上昇する時代に注目すべき株式
記事を読んでわかること
わかること
この記事の対象となる人
こんな人におすすめ
結論からいいます
結論
セクター別のパフォーマンス
前回の記事でも言いましたが、米株の投資に限らず、何かを分析するときに重要なのは、”鳥の目 → 虫の目 → 魚の目”の順で分析することです。
鳥の目とは『全体像』を把握することです。空から地上を見渡す鳥のように。
虫の目とは『詳細』を把握することです。地面を這(は)う虫のように
魚の目とは『流れ』を把握することです。潮の流れをみる魚のように。
そこでまずは、多くの機関投資家が米株投資のベンチマークとしているS&P500の『セクター別パフォーマンス(年初来)』を "鳥の目" で見てみましょう。
セクターとは?
株式を分析する時に、企業の業種や個別の株式が持つ特性をベースにして分類した”グループ”のこと
例えば、日本の東証では『33業種』のセクターで株式を分類しています。
セクターに分類し、それらをまとめて分析することで、現在のアメリカ株全体がどんな状況にあるのか?という全体像が簡単に理解できます。
S&P500のセクター別パフォーマンス
例のごとくPythonで分析してみました。
期間は今年初めから先週19日までとなります。
すると以下の結果が出ました。
・年初来のセクター別パフォーマンス
前回は ”Energy=エネルギー”のパフォーマンスが際立っていましたが、原油価格の下落で1位の座から陥落してしまいました。
代わって1位の座に上り詰めたのが、”Media & Entertainment=メディア&エンターテインメント” のセクターです。
これは、将来の景気回復と消費の拡大を先取りした動きと言えます。
閑話休題:注目銘柄
ちなにみ ”メディアとエンターテインメント”-2つの要素を持った銘柄として注目したいのが『ウォルトディズニー(DIS)』です。
ウォルトディズニーは、体験型のエンターテインメント企業として世界的に有名な企業です。
それに加えて、メディア事業にも力を入れています。
最近では『ディズニープラス』を世界中で展開しています。
2026年にディズニープラスの会員数が2億9,400万人まで達し、Netflixの会員数を“逆転”するという予測まで出ています。
日本では、NHKの大河ドラマ『麒麟が来る』で明智光秀を演じた長谷川博己さんが、ディズニープラスのCMに起用されていますね。
話を戻しましょう。
上のパフォーマンスチャートでは、1位が”Media & Entertainment=メディア&エンターテインメント”、2位が前回取り上げた”Energy=エネルギー”の好パフォーマンスが確認できました。
そして今回注目して欲しいのが、3位につけている ”Banks=銀行” のセクターです。
なぜか?
その理由はー
理由
景気の回復と金利の上昇は銀行の利益を増加させる
からです。
インフレ時代の注目セクター
"銀行株"
前回(16日)の記事のパフォーマンスチャートをみると、銀行のセクターは3位(プラス19%)につけています。
そして今回も同じく3位にあります。
しかし上昇率はプラス27%と、前週から8%上昇しています。
先週、米国(アメリカ)の長期金利は1.754%まで上昇する局面がありました。
米金利の上昇に連動して銀行株のパフォーマンスも上昇している
この事実は、金利の上昇と銀行株のセクターの間には ”良好な関係” があることを示しています。
ちなみに主要な米銀の株価は、昨年11月以降、右肩上がりの展開となっています。
・銀行株のチャート
金利上昇の恩恵を受ける銀行株
その関係を考える上で重要なことがひとつあります。
それは、銀行がどうやって稼いでいるのか?
この点を理解することです。
簡単に言えば、銀行は以下のビジネスで稼いでいます。
銀行のビジネス
貸出金利と調達金利の差が利益となるビジネス
上のことを簡単に言えば、『銀行が預金などで集めた資金に金利(利ざや)を上乗せして企業や個人に貸し出し利益を得ている』ということです。
ポイントはー
ポイント
銀行の利益は”金利の差=利ざや”
にある、ということです。
この ”利ざや”というのは、景気と金利の動向に大きく左右されます。
以下のとおり密接な関係があるからです。
利ざやと景気と金利の関係
現在の米国(アメリカ)経済は④の段階にあります。
ポイントは、『景気の回復→モノやサービス価格の上昇(インフレ)→金利の上昇』という一連の流れと、銀行の”利ざや”収益の動きが密に関わっていることです。
インフレには二種類ある
また、もうひとつ注目すべきポイントがあります。
それは以下のことです。
注目ポイント
”景気の回復が土台となっての金利上昇”が銀行株の上昇要因となる
なぜ、”景気の回復が土台となっての金利上昇”と、わざわざ協調したのか?
それは、インフレには二つの種類があるからです。
インフレの種類その1:良いインフレ
デマンドプルインフレ
デマンドプルインフレの要因
- 景気の回復
- 内需の拡大
良いインフレのことを『デマンドプルインフレ』といいます。
このインフレは、景気の回復とそれに伴う内需の拡大-いわゆるモノやサービスを求める需要が拡大することで発生します。
この時、銀行には多くの企業や個人から『お金を貸してくれ!』という需要が拡大します。
当然銀行の方は、ビジネスチャンス!とばかりに、上で説明した”利ざや”を上乗せして多くの資金を貸し出します。
そして利益を稼いでいきます。
つまり、良いインフレとは『需要の拡大』によるインフレのことです。
インフレの種類その2:悪いインフレ
コストプッシュインフレ
コストプッシュインフレの要因
- 資源価格の高騰
- 賃金の上昇
一方、悪いインフレのことを『コストプッシュインフレ』といいます。
このインフレは、資源価格の高騰や賃金の上昇といった供給サイドのインフレであるため、需要が拡大するどころか景気の後退要因(=需要の縮小要因)となります。
悪いインフレでも金利は上昇します。
しかし、需要が拡大しないため銀行は利益を稼ぐことができません。
”このようにインフレには二種類ある”ということを認識しておかないと、金利が上昇しているから銀行株を買おう!なんて短絡的にトレードすると痛い目をみます。
ご注意ください。
金利を理解するための良書はこれだ!
さて、前回と今回は、インフレや金利についてお話しました。
ジェイが実務から得た経験でいうと、インフレについてはわかっても金利については中々分かりにくい... という人がかなりいると思います。
長期金利って何?
長期があるなら短期もあるの?
長期と短期にはどんな違いがあるの?
等々...
仕事で毎日接している金融マンなら当然の知識も、それ以外の人にとって金利はとっつきにくい分野です。
そんな金利を基本から理解する良書が以下です。
・No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい金利の本
著者は、日本を代表するエコノミスト上野 泰也さんです。
経済を知り尽くした上野さんが書かれたこの本は、そもそも金利とは何のか?といった基本の『き』から、米国(アメリカ)の中央銀行にあたる組織FEDがどんな組織とシステムで成り立っているのか?までを解説している良書です。
文字も程よい大きさで、かつ図解での説明がたくさんあります。
『金利って分かりにくい』と思っている人もこの本を読めば、金利って何?金利が及ぼす影響って何?という疑問がスラスラ解消していくでしょう。
上の金利本を読んだあとに、以下の本も読むことをおすすめします。
・No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい株式の本
著者は同じく上野 泰也さんです。
そもそも株式とは何のか?株式は世の中にどんな影響を与えているのか?株価はどんなことで動くのか?等々を分かりやすく解説した良書です。
上の『No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい金利の本』と合わせて読めば、株式投資の理解が深まるでしょう。
これからの投資ライフのため、ぜひご一読ください!
ジェイが注目している米株は?
前回は ”エネルギー”のセクター、今回は ”銀行”のセクター を取り上げました。
次回は、ジェイの”虫の目”と”魚の目”を使って注目している銘柄についてお話します。
いよいよ『インフレ時代の米株投資』シリーズの最終回です。
乞うご期待!
まとめ
まとめ
- これから米国の社会はインフレの時代を迎える
- インフレの時代に合った株式がある
- それが銀行株のセクターである
- 景気の回復を土台としたインフレが続く場合銀行株も上昇しやすい
注記事項
当サイトのコンテンツを参考に投資を行い、その後発生したいかなる結果についても、当サイト並びにブログ運営者は一切責任を負いません。すべての投資行動は『自己責任の原則』のもとで行ってください。
最後に
Pythonを学びたい方へ
今やPythonは、マーケットの分析に限らず、あらゆる分野で使われているプログラミング言語です。
事実、今回の記事でもPythonのプログラミングで最も使われる『matplotlib』と『pandas』を用いて、インフレと金利のチャートやS&P500のセクターパフォーマンスを分析しました。
Pythonを学んでおけば株式の投資に役立つだけでなく、これからのキャリアを形成する上でも力強い武器となるでしょう。
『私もPythonを学んでみたい!』
という人は以下のリンク先をご覧ください。
プログラミングを学ぼう
なぜプログラミングを学ぶ必要があるのか?その理由がわかります。
そして、ジェイが四苦八苦しながら『これがPythonを効率的に学ぶ方法だ!』と自信をもっておすすめした学習方法について解説しています。
この記事と出会ったのも何かの縁です。
ぜひチャレンジしてみてください!