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前回の記事ではPythonとseabornを使って、NY原油先物価格(WTI)と米エネルギー株の相関関係について考えてみました。
その結果、原油価格とエクソンモービル(XOM)の相関係数が『0.62』と一番高いことがわかりました。
一方、ジェイが投資をしているデボンエナジー(DVN)と原油価格の相関係数は『0.54』で、一番低いことがわかりました。
詳細については、以下の記事をご覧ください。
-
【Python】米エネルギー株と原油価格の相関関係を分析してみよう 前編
続きを見る
しかし、異なる2つのデータの相関関係を考える時は、単に相関係数という数値だけをチェックするだけは足りません。
もうひとつチェックすることがあります。
それは-
線形のチャートでもちゃんと確認する
ということです。
『原油価格と米エネルギー株の相関関係を分析する』全3回シリーズの2回目は、線形のチャートで2つのマーケットの相関関係を確認するポイントについてお話します。
もちろん、今回もプログラミング言語 ”Python” を使った分析となります。
なお最終回では、Pythonのコードを一気にまとめてご紹介します。
今回のテーマ
”Python”を使って原油価格と米エネルギー株の相関関係を分析
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この記事の対象となる人
こんな人におすすめ
- 米国株の投資を考えている人
- 米エネルギー株に投資をしたい人
- Pythonに興味がある人
結論からいいます
結論
- ”Python” を使えば、2つの市場の相関関係が簡単にわかる
Pythonで価格データを取得
まずは、Pythonを使って前回と同じく原油価格と米エネルギー株の価格データを取得します。
取得データの概要
・データソース
Yahoo! finance USA
・期間
年初来~5月7日の終値まで
・原油価格
NY原油先物(WTI)
(ティッカー:CL=F)
・米エネルギー株
-エクソンモービル
(ティッカー:XOM)
-シェブロン
(ティッカー:CVX)
-デボンエナジー
(ティッカー:DVX)
-オクシデンタル
(ティッカー:OXY)
価格データは ”Yahoo! finance USA” から取得します。
原油価格はNY原油先物-いわゆるWTI原油先物価格のデータを使います。
米エネルギー株は、多くの投資家から注目されているエクソンモービル(XOM)とシェブロン(CVX)、そしてジェイが投資をしているデボンエナジー(DVX)、競合のオクシデンタル(OXY)の価格データを使うことにします。
なお、Pythonで作成する相関チャートでは、銘柄名をティッカーコードで表示します。
取得した価格データの確認
Pythonを使えば、データフレーム(エクセルのような形式)で簡単に価格データが取得できます。
ここまでは、前回と同じです。
Pythonで相関関係を分析
さて、ここからが今回の本題です。
Pythonで取得した価格データをもとに、NY原油先物(WTI)と米エネルギー株の相関関係を分析してみてます。
ヒートマップで相関関係を分析
相関関係を分析する時に必ず計算するのが『相関係数』です。
相関係数とは
・2つのデータの線形な関係の強弱を測る指標
・マイナス1からプラス1の間で強弱を測る
・マイナス1に近いほど、2つのデータは逆の方向に動く関係にある
・プラス1に近いほど、2つのデータは同じ方向に動く関係にある
Pythonと可視化ライブラリ『seaborn』を使えば、以下のように具体的な数値(マイナス1~プラス1)で、各データの相関関係が確認できます。
・ヒートマップの相関チャート
上のチャートは、相関関係を分析する際によく使われる ”ヒートマップ” です。
相関分析で重要なこと
しかし、相関分析ではもうひとつ重要なことがあります。
それが以下のことです。
必ず線形のチャートでも相関関係を確認すること
線形のチャートとはなにか?
そして、線形チャートのどの点に注目すべきなのか?
次からは、これらの点について具体的にお話します。
線形チャートで相関関係を分析
まずは、線形のチャートをお見せします。
エクソンモービルと原油価格
縦軸がエクソンモービル(XOM)、横軸がNY原油先物(WTI)価格となります。
右肩上がりのラインが引けます。
その周りに、データがプロットされています。
このカタチは、NY原油先物(WTI)価格が上昇(下落)すれば、エクソンモービル(XOM)の株価も上昇(下落)する関係(同じ方向に動く関係)にあることを示しています。
デボンエナジーと原油価格
縦軸がデボンエナジー(DVN)、横軸がNY原油先物(WTI)価格となります。
エクソンモービル(XOM)と同じく、こちらも右肩上がりのラインが引けます。
その周りに、データがプロットされています。
こちらのチャートも、NY原油先物(WTI)価格が上昇(下落)すれば、デボンエナジー(DVN)の株価も上昇(下落)する関係(同じ方向に動く関係)にあることを示しています。
どの点に注目するの?
一見すると、2つのチャートは同じに見えます。
しかし、これらのチャートを重ねると、ある ”2つのこと" がわかります。
それが以下のことです。
ある2つのこと
- ラインの傾き
- プロットされたデータのバラつき
線形のチャートでは、上2つのことを必ず視覚で確認することが必要です。
なぜか?それは以下の理由からです。
線形のチャートで確認する理由
- ラインの傾きは相関関係の強さを示す
- データのバラつきは線形チャートの信頼性を示す
では、実際に上2つの線形チャートを重ねて描画(びょうが)してみましょう。
・線形の相関チャート
ラインの傾きを確認しよう!
まずは ”ラインの傾きから” チェックしてみましょう。
この傾きが急ならば ”相関関係が強い”、緩やかならば "相関関係が弱い” と判断します。
上のチャートを見ると、ラインの傾きが急な方が『デボンエナジー(DVN)と原油価格』です。
一方、ラインの傾きが緩やかな方が『エクソンモービル(XOM)と原油価格』です。
つまり線形チャートで分析すると、デボンエナジー(DVN)と原油価格の相関関係の方が、エクソンモービル(XOM)と原油価格のそれよりも高いということになります。
これは、ヒートマップで分析した相関係数とは逆の結果となります。
しかし、線形チャートではもうひとつ確認することがあります。
それが、プロットされた点の ”バラつき度合い” です。
プロットのバラつき度合いを確認しよう!
縦軸の米エネルギー株のデータと、横軸のNY原油先物(WTI)のデータが重なる水準にそれぞれ観測値(点)が描画(プロット)されています。
プロットされたデータのバラつき度合いを見ると、『デボンエナジー(DVN)とNY原油先物』の方が、『エクソンモービル(XOM)とNY原油先物』のそれよりも、バラつき度合いが大きいことがわかります。
重要なことは以下の点です。
バラつき度合いの大きさが意味すること
バラつき度合い
- バラつきが大きい
→ 線形チャートの信頼性が低い - バラつきが小さい
→ 線形チャートの信頼性が高い
と解釈します。
そうすると、バラつき度合いの大きい『デボンエナジー(DVN)とNY原油先物』の線形チャートの信頼性は低いことなります。
重要なのは”バラつき度合い”
ラインの傾きとプロットされたデータのバラつき度合い、どちらを重視するのか?
それはー
データのバラつき度合い
の方です。
なぜなら線形チャートのラインはー
プロットされたすべての点の平均誤差をとっているにすぎない
からです。
上のことを簡単に言うならば、線形チャートのラインは ”すべての点に当てはまりの良いように描かれているだけ” ということです。
なので、線形チャートで見るべきは、プロットされたデータのバラつき度合いがラグビーボールのような楕円形を描いているのか?それともサッカーボールのような丸い円を描いているのか?この点が重要となります。
バラつき度合いのポイント
- ラグビーボール(楕円形)
→ 線形チャートの信頼性が高い - サッカーボール(円形)
→ 線形チャートの信頼性が低い
ラグビーボールのような楕円形はデータのバラつきが小さく、それゆえ2つのデータには何らかの相関関係があると考えます。
だから線形チャートの信頼性も高いことになります。
一方、サッカーボールのような円形は、データのバラつきが大きいことを意味します。
データのバラつきが大きいということは、何らかの相関関係がない、もしくはあっても弱い可能性が高いことを示します。
ヒートマップとバラつき度合いでわかること
ヒートマップと線形チャートのバラつき度合いからわかることは、エクソンモービル(XOM)とNY原油先物との相関関係は高いということです。
言いかえれば、エクソンモービル(XOM)の株価は原油価格のトレンドに大きな影響を受けやすいということです。
一方、デボンエナジー(DVN)も原油価格と一定の相関関係はあります。
しかし『0.54』という相関係数とデータのバラつき度合いは、原油価格以外の要因もデボンエナジー(DVN)の株価を押し上げている可能性があることを教えてくれています。
相関と因果は違う
ここで一つ注意点があります。
それはー
相関関係と因果関係は違う
ということです。
相関とは『ある市場が上昇または下落するともう一方の市場は同じ方向もしくは反対の方向に動く関係にある』ということです。
一方、因果とはー
原因や要因がありそれにより生じる結果
のことです。
これまでみてきたとおり、原油価格と米エネルギー株のトレンドには一定の相関関係がみられました。
エネルギー企業は原油がなければビジネスができないため、両者には『原油の動向→株価の動向』という因果関係もあると言えます。
しかしマーケットでは、相関関係があっても因果関係がはっきりしないこともあります。
例えば、株式市場と円相場の関係です。
最近では減りましたが、2000年代前半から『株高 / 円安』『株安 / 円高』という相関関係が見られます。
しかし、因果関係となるとマーケット関係者の間では、『株高(株安)という要因があるから円安(円高)になる』という主張と、『円安(円高)だから株高(株安)になる』という主張があります。
つまり、因果関係については意見が分かれているということです。
このように、相関関係と因果関係は別ものです。
混同しないようにしましょう!
Pythonを使えば簡単に相関関係が確認できる
このようにPython、matplotlibそしてseabornを使えば、簡単に各マーケットの関係性が具体的な数値で確認できます。
もちろん、コードを組む時はある程度の時間が必要です。
しかし、一度コードを組んでしまえば、あとはそのコードを実行するだけで、簡単にチャートが作成できたり、相関係数のような統計的な数値もあっという間に計算できます。
しかもほんの数秒で!
この記事をきっかけにPythonに興味を持たれた方は、以下の『Pythonを学びたい方へ』をご覧ください。
ジェイが自信を持っておすすめする『Pythonを効率的に学習する方法』をお教えします!
Pythonを学びたい方へ
今やPythonは、マーケットの分析に限らず、あらゆる分野で使われているプログラミング言語です。
事実、今回の記事でもPythonのプログラミングで最も使われる『matplotlib』と『seaborn』を用いて、相関チャートを作成しました。
Pythonを学んでおけば株式の投資に役立つだけでなく、これからのキャリアを形成する上でも力強い武器となるでしょう。
『私もPythonを学んでみたい!』
という人は以下のリンク先をご覧ください。
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プログラミングを学ぼう
なぜプログラミングを学ぶ必要があるのか?その理由がわかります。
そして、ジェイが四苦八苦しながら『これがPythonを効率的に学ぶ方法だ!』と自信をもっておすすめする学習方法について解説しています。
この記事と出会ったのも何かの縁です。
ぜひチャレンジしてみてください!
まとめ
・Pythonを使えば、簡単に各市場の相関関係が確認できる
・線形チャートではデータのバラつき度合いを確認しよう
・相関関係と因果関係は違う
最終回は、いよいよPythonコードの紹介です。
こうご期待!
注記事項
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