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さて、今月最大のビッグイベント『連邦公開市場委員会(通称FOMC)』が11月2日(日本時間3日早朝)に終了しました。
今回の注目ポイントについて、わかりやすくFOMC声明文とパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見に分けてまとめました。
11月FOMCの注目ポイント
FOMC声明文
- しつこいインフレに苦慮している
- データ次第で適切に金融政策を調整する用意あり
パウエル会見
- 利上げペースの減速を示唆
- インフレ抑制の政策効果には時間が必要
- 利上げ停止の議論は”かなり”時期尚早
- 従来の想定よりも政策金利の水準が高くなる
- 景気がソフトランディングする可能性は狭まった
上記の内容を受けて11月2日の米国市場ではー
米国市場の反応
- 米金利が上昇
- 株価指数が急落
する展開となりました。
米国市場のパフォーマンス:11月2日
11月のFOMCを通過して、これからの株式市場ー特に米国の株式市場(アメリカ株)に投資をする時に注目すべき『新たな焦点』が浮上しました。
新たに浮上してきた焦点は、今後の米国株のトレンドを考える上で非常に重要なことです。
なので今回は、この『新たな焦点』についてお話しします。
最初に結論として、新たな焦点とは何か?を簡単に述べます。
その後、今回の結論に至った理由を述べます。
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結論(新たな焦点)
- もはや米利上げペースは米国株の焦点ではなくなった
- 新たな焦点として『利上げをいつまで続けるのか?』が浮上
- 新たな焦点として『政策金利をどこまで上げるのか?』が浮上
- 強い経済指標は米国株にとって『悪いニュース』
- 22年の米国株は1年を通して下落リスクを警戒する相場となるだろう
この記事はこんな方におすすめ
- 米国株への投資を考えている人
- これからの米国株を左右することについて知りたい人
- 経済や投資のことを勉強したい人
本題
米国株の新たな焦点とは?
11月の連邦公開市場委員会(FOMC)の内容を受け、米国株には新たな焦点が浮上してきました。
その中でもー
新たな焦点
- いつまで利上げを続けるのか?
- どこまで政策金利を引き上げるのか?
上の2つは、特に重要なことです。
利上げペースはもはや焦点にあらず
なぜ、上2つのことが特に重要な焦点なのか?
この点を考える上でヒントとなるのが、FOMCの結果が判明した2日の米国市場の動きです。
まずは、下2つのチャートをみてください。
米国の債券市場:米金利が上昇
米国の株式市場:株価が急落
11月FOMCの内容を受け、米国市場では金利が上昇しました。
金融政策の方向性に敏感な2年債の利回りは4.6%台へ上昇しました。
一方、主要な株価指数は軒並み下落しました。ハイテク株のトレンドを示すナスダック100指数にいたっては、3%を超える急落となりました(冒頭のパフォーマンスチャートを参照)。
このような米国市場の反応で注目すべきポイントはー
注目ポイント
- パウエルFRB議長の会見に反応したこと
です。
冒頭で述べたパウエル会見のポイントをもう一度みてみましょう。
パウエル会見
- 利上げペースの減速を示唆
- インフレ抑制の政策効果には時間が必要
- 利上げ停止の議論は”かなり”時期尚早
- 従来の想定よりも政策金利の水準が高くなる
- 景気がソフトランディングする可能性は狭まった
一言でいえば、『タカ派の内容』です。
パウエルFRB議長は、将来の利上げペースを減速させることについてのシグナルを送ってきました。
米国市場の参加者が利上げペースの減速の方を強く意識していたならば、2日の市場は『金利の低下→株高』になるはずでした。
しかし上のチャートを見ればわかるとおり、現実は真逆の展開となりました。
この事実は、利上げペース減速以外の言動ー
・利上げ停止の議論は”かなり”時期尚早
・従来の想定よりも政策金利の水準が高くなる
の方に反応したと考えるのが自然です。
上2つの文言を一言で要約するとー
要約
- すぐに利上げが終わるなんて思うなよ
ということです。
パウエルFRBのタカ派スタンスを受け、短期金融市場では政策金利が行き着く水準ーいわゆる『ターミナルレート』が、来年の前半までに『5%台』まで上昇することを織り込み始めています。
この点について、実際にチャートで確認してみましょう。
米政策金利の予想推移
前回のFOMC(9月20~21日開催)の水準と比較すると、政策金利(通称FF金利)の最終地点(ターミナルレート)が急速に上昇していることがわかります。
しかも、FF金利が5%台へ到達した後の数ヶ月間は、その高水準での推移が続く...つまり、パウエルFRBはインフレを完全に抑え込むためにー
重要ポイント
- 政策金利の水準を長期にわたって維持すること
も短期金融市場では意識され始めているのです。
焦点は経済指標へシフト
次回のFOMCは、12月13〜14日に開催されます。
11月5日時点での12月会合の利上げ予想を確認すると、なんと50ベーシスポイント(0.5%)と75ベーシスポイント(0.75%)差がほとんどありません。
1週間前と比べると、その差はほとんど同じです。
12月FOMCの利上げ予想
※直近:11月5日12時時点
※1週間前は、25ベーシスポイント利上げの可能性が8.6%あった
パウエルFRB議長が将来の利上げペースを減速させることを示唆しても、市場がそれを素直に受け取っていない理由はなんでしょうか?
それはー
理由
- 経済指標の内容でFRBの政策が左右される
ことを市場は警戒しているのです。
なぜか?
それは、パウエルFRB議長自らが『政策はデータ次第で決める』と再三主張しているからです。
結局は経済指標次第
パウエルFRBは今後も利上げを継続し、その水準は5%台へ達する。しかも政策金利を高水準で維持する...
2022年も残り2ヶ月を切りましたが、パウエルFRBのタカ派スタンスを考えるならば、今年の米国株は取引の最終日まで下落リスクを警戒する日々が続くことになりそうです。
そして、米国株がさらに下落する要因として注視しておきたいのがー
注視したいこと
- 強い経済指標
です。
『強い』とは、市場が事前に予想していた数値を『上回る』ことです。
特に、雇用とインフレに関連した経済指標には注意が必要です。
なぜか?
それはー
理由
- FRBの金融引き締め長期化につながるから
です。
この点については、以下の分析記事で詳細に述べています。お時間のある時にご覧ください。
-
【11月 米国株の展望】トレンドを左右するのはFOMCと2つの経済指標
続きを見る
なぜ雇用とインフレの指標が強い内容になると、パウエルFRBは金融引き締めが長期化するのか?
それはー
長期化の理由
- インフレの低下を阻むから
です。
最新の米雇用統計をチェック!
11月4日(金曜日)に、10月の雇用統計が発表されました。
この雇用指標では、雇用者数の増減を示す『非農業部門雇用者数変化』がとても重要視されます。
が、今は賃金の伸び率を示す『平均時給』も重要です。
賃金の伸びが加速したり高止まりすると、企業は利益を出すために賃金コストを商品やサービスの価格に転嫁します。
そして商品やサービスの価格が上昇していくのです。
これら一連の流れを受けて『インフレがなかなか低下しない』、という新たなリスクが発生するのです。
そして11月4日に発表された10月雇用統計の結果はー
内容
- 強弱まちまちの内容
でした。
10月米雇用統計の内容
項目 | 結果 | 予想 | 9月分 |
非農業部門雇用者数変化 | 26.1万人 | 19.5万人 | 31.5万人 |
失業率 | 3.7% | 3.6% | 3.5% |
平均時給(MoM) | 0.4% | 0.3% | 0.3% |
平均時給(YoY) | 4.7% | 4.7% | 5.0% |
※MoM:前月比 / YoY:前年同月比
非農業部門雇用者数変化は予想以上の内容となり、かつ9月分も上方修正されました。
一方、失業率は0.1ポイント上昇しました。
そして、上で指摘した『平均時給』は、おおむね予想通りの内容でした。
注目して欲しいのが、前年同月比でみた平均時給の推移です。
市場の予想通り、賃金に低下の圧力がかかっていることが確認されました。
平均時給の推移
上で述べたとおり、賃金の低下はインフレ動向に大きな影響を与えます。
ゆえに賃金の低下トレンドが確認されたことは、『インフレの抑制期待を高める』要因となり得るのです。
11月4日の米国株はこの期待が意識され、主要な株価指数が軒並み上昇したとジェイは考えています。
しかし下落のリスクは消えず
一方、米債市場の反応をみると、長期金利は4.1%台で横ばい推移でした。
米長期金利のチャート
この状況は、予想以上に強かった非農業部門雇用者数変化が影響していると思われます。
堅調な雇用の増加は、パウエルFRBの利上げ政策を後押しする要因となるからです。
また、このまま平均時給が低下のトレンドを辿るかどうかもわかりません。
よって、長期金利はインフレ指標で物価の上昇圧力が後退していることが確認されない限り、インフレのリスクを意識する動きが続くことが予想されます。
なので、次に注目すべきは『インフレ指標』です。
そして、インフレ指標で目先注目すべきは、11月10日(木曜日)に発表されるー
注目のインフレ指標
- 10月の消費者物価指数(CPI)
です。
今回のまとめ
まとめ
- もはや利上げのペースは米金融政策の焦点から外れた
- 新しい焦点のひとつが利上げ”いつまで続けるのか?”
- もうひとつの新しい焦点は政策金利を”どこまで上げるのか?”
- 今後の米国株が下落する要因として『強い経済指標』を警戒したい
- 今年の米国株は最後まで下落のリスクを警戒する展開が続くだろう
今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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