前回は、米国という国がどの組織に属するどこの誰が、どのようにして金融政策を決定しているのか?この点について簡単にお話しました。
今回は、現在導入されている具体的な金融政策についてコメントします。
なぜなら、中期的もしくは長期的に米ドル相場のトレンドを大きく左右するからです。
量的緩和政策
みなさん「量的緩和政策」という言葉を新聞やニュースで見たり聞いたりしたことはあありますか?
今回の主役はこの言葉です。
量的緩和政策とは何か?それは...
FRBがある資産を金融市場から買い上げ、その代金として米ドルを金融市場に供給する金融政策のことです。
量的緩和政策により、企業は社会全体に米ドルが供給されることになります。
なぜFRBはこのような政策を実行するのでしょうか?
それは米ドルの資金が枯渇すると経済活動が急速に落ち込んでしまうからです。
何故なら、お金というのは人間で例えるならば血液だからです。
血液は色々な栄養素を体中に配っています。
お金も同じです。
お金が社会に回ることで社会活動は初めて活発化します。
逆にお金の流れが遮断されれば、経済活動は一気に落ち込みます。
FRBはこういった事態を避けるために、社会に流れている米ドルの供給量を注視しているのです。
血液を求めて...
2020年3月の米ドル相場は歴史的な動きを見せました。その動きとは?
以下のチャートで説明しましょう。
ドルインデックスチャート
こちらはドルインデックスというチャートです。
ドルインデックスというのは簡単に言えば、米ドル相場の大まかな方向性を示す指数です。
3月10日以降、このドルインデックスが急騰しています。
強烈な米ドル買い圧力が為替市場全体に広がったためです。
なぜそんなことが起こったのでしょうか?それは...
社会に出回る米ドルを少しでも多く確保しようと、世界中の投資家や企業が我先にと米ドルをかき集めたからです。
なぜ世界中の投資家や企業はこんな行動に出たのでしょうか?それは...
コロナショックで先行きどうなるかわからない...
なので、基軸通貨の米ドルをキャッシュで保有することで将来の不安を解消したい!
とみんなが考えたからです。
みんなが欲しがったために、社会に流れている米ドルの量以上の需要が発生しました
だから米ドル相場は急騰したのです。
言い換えればこの急騰は、米ドルという血液を巡って繰り広げられた世界規模の戦いだったのです。
血液の流れを止めるな!
この状況を放置していたら、米ドル相場はさらに急騰したことでしょう。
しかし、ドルインデックスのチャートを確認すると、3月下旬以降下落しています。
そう、一転して米ドル売り圧力が高まったのです。
これは米ドルの需要が急速に縮小したことを意味します。
ドルインデックスチャート
なぜ、突然このような状況へ転じたのでしょうか?その理由は...
3月23日にFRBが無制限の量的緩和政策を決定したのです。
パウエルFRBは、米国という国が発行する国債や企業が発行する社債まで幅広く購入することを3月23日のFOMCで決定しました。
ポイントは「無制限」という言葉です。
そう、パウエルFRBはアメリカ経済がコロナショックから立ち直るまで、国債や社債を無制限に購入すると決定したのです。
無制限に購入するということは、資産を買った分だけ際限なく米ドルが社会に供給されることになります。
何度も言いますがその量は無制限です。
際限がないのです。
こんな途方もない政策をバーンっと打ち出しことで為替市場の関係者ビックリしました!
そのビックリ度合いはドルインデックスチャートの米ドル安(青いゾーン)を見れば一目瞭然ですね。