いやあ、昨日の米株はすごかったですね。
利益を確定する動きも見られましたが、上昇の勢いにあっけなく飲み込まれてしまった感じです。
昨日のコメントで指摘したとおり、確かに中国の経済は回復基調へと転じています。
経済活動の再開によって、今後は米国や欧州でも経済の回復を示すデータが確認されるでしょう。
だからといって、この株高のスピードは、単に景気が回復するという期待だけでは説明できません。
やはり株高の根底にあるのは「あれ」です。
今日のキーポイント
1 | 株高の勢いが止まらない根底になる「あれ」 |
2 | 株高の先導役は相変わらず米国の株式市場 |
3 | 現在は出遅れ感のある国や地域の株式パフォーマンスが上昇中 |
世界中でお金がジャブジャブ状態
「あれ」とは...
「緩和マネー」
です。
緩和マネーを簡単にいうと、中央銀行が市場に供給する資金のことです。
コロナショックによる景気の後退を何としても防ごうと、米国や日本をはじめ、世界の中央銀行は総緩和状態となっています。
例えば、米国ならばパウエルFRB(以下ではFEDと表記)が米ドルを大量に供給しています。
そして日本ならば、黒田日銀が円を大量に供給しています。
これが世界中で起こっているのです。
今の金融市場はお金がジャブジャブに溢れる...
「総緩和の状態」
です。
ちなみに、緩和マネーを英語でいうと「Easy Money」と言います。
「Easy(イージー)」...簡単に手に入るお金だからこそ、株式市場に流れるのでしょうか?
イージーだから株式市場へ向かう
その通りです。
この点を考える上で重要なヒントとなるのが、2008年~2014年の間に続いた米国の量的緩和政策と新興国市場の動きです。
当時の世界経済は世界金融危機の影響に対応するため、今とおなじく「総緩和の状態」でした。
特に米国では、当時のFED(バーナンキFRB)が、大規模な量的緩和を導入し、米ドルを市場にジャブジャブ流していました。
この時、新興国の株式市場はどのような動きとなったのか?
この点について、昨日も出てきたMSCIのチャートで確認してみましょう。
イージーマネーがやってきた!
まず注目すべきは、緑のゾーンの2008年Q4~2011年Q3の3年間です。
新興国の株式パフォーマンスは、世界の株式だけでなく、世界の株高のけん引役である米国の株式市場のパフォーマンスをも上回っていることがわかります。
この時の新興国の株高は、ジャブジャブ状態の米ドルが米国内の株式だけでなく、新興国の株式をも駆け巡ったために発生した現象だったのです。
なぜ日本や欧州ではなく、新興国だったのでしょうか?
それは、より高い利益を得るためです。
より高い利益を得るためには、より高いリスクが伴う市場で勝負する必要があります。
そう「ハイリスク・ハイリターン」の原則です。
2008年~2011年Q3の3年間はハイリターンを求めて、米ドルというイージーマネーが、新興国市場に大量に流入した時期だったのです。
そしてイージーマネーが去っていった...
今度はパフォーマンスチャートの赤いゾーンを見てみましょう。
2011年Q3以降、新興国の株式パフォーマンスは低下傾向へ転じていることがわかります。
欧州債務危機が意識され、リスク性の高い株式に対する売り圧力が高まったからです。
しかし、これだけが原因でありません。
欧州債務危機はすでに過去のイベントです。
しかし、新興国の株式パフォーマンスは低迷しています。
ということは他にも理由がある、ということです。
その理由とは...
「FEDが量的緩和からの脱却を模索しはじめた」
からです。
量的緩和の悪影響については、導入した当初から指摘されていました。欧州の債務危機が下火になった2012年後半あたりから、徐々にこの点が意識され、FEDは量的緩和の解除に向けた地ならしに動きはじめました。
その結果、何が発生したのか?それは...
「新興国ショック」
でした。
2013年5月、当時のFRB議長だったバーナンキ氏が量的緩和の解除について言及すると、新興国の株式は軒並み下落しました。
今まで相場を支えていたイージーマネーがなくなるリスクが突如として現れたわけですから、当然の反応です。
実際、FEDは徐々に量的緩和の解除に向けた動きを加速させ、2014年の10月末に終了することを決定しました。
FEDの量的緩和の解除に動きによってイージーマネーに沸いた新興国の株式は過去3年間の上昇から一転、上値の重い展開が続きました。
イージーマネー再び!
しかし、現在はそのイージーマネーが再び世界の金融市場を席捲しています。
いままでは米国の株高が注目されていましたが、早すぎる株高のスピードに警戒感が高まっています。
となれば、次にイージーマネーが向かうのは、米国外の株式市場ということになります。
その株式市場とは、米国の株式からパフォーマンスが大幅に見劣りする市場です。
言いかえれば...
「出遅れ感の強い株式市場」
です。
もう一度パフォーマンスチャートをみると...
先週から新興国の株式が米国の株式や世界の株式のパフォーマンスを上回っていることがわかります。
そう、いよいよ出遅れていた株式市場にまでイージーマネーが流れ込んできているのです。
この状況は、ジャブジャブのイージーマネーが世界の株式市場に本格的に流れ込んできた証と言えるでしょう。
これらの状況を考えるならば...
「株高は続く」
というジェイの予想に変更はありません。
まとめ
今回のまとめです。
1 | 世界の株高トレンドは変わらず |
2 | 株高の土台は緩和マネー(Easy Money-イージーマネー) |
3 | 過去にイージーマネーが新興国に流入し株高となった経緯がある |
4 | 出遅れ感の強い欧州と新興国の株式パフォーマンスが改善 |
5 | 株高トレンドの予測に変更なし |
以上となります。