『今の米株高は異常!』
『米国の大統領選挙の後に米株は下落するんじゃないか?!』
今年4月から始まった米株の上昇と、高すぎる株価に対して不安を感じている読者の方は多いと思います。
米国の大統領選挙の後も短期的に米株は株高のトレンドを維持すると、ジェイ予想しています。
このことについては、前回の記事で書きましたのでご参照ください。
しかし投資で重要なことは、自分が考えている予想とは別のシナリオを準備しておくことです。
そこで今回は、米国の大統領選挙の後に米株が下落するとしたらどのような要因があるのか?この点について考えてみます。
こんな要因があるんだな、と思っていただくだけでも、下落に対する不安感がなくなると思います。
結論
記事の対象者
・米株の投資に興味がある人
米株高のトレンドを崩す2つの要因
米国の大統領選挙が終わった後に米株高トレンドが崩れるとしたら、以下の要因が考えられます。
米株高トレンドを崩す2つの要因
②:大規模な景気対策が株安の要因になる
まず最初の要因ですが、増税は確かに株安の圧力を高める可能性があります。
バイデン増税は株安の要因か?
バイデン候補は、以下の増税案を提示しています。
大企業への増税:法人税を21%から28%に引き上げ
バイデン候補が増税スタンスを打ち出している理由は、コロナショックに対応するために必要な景気刺激策を支える財源を確保するためです。
これ自体は間違いではないのですが、2017年以降に始まった株高の土台が『トランプ減税』にあることを考えるならば、『バイデン増税』は株安要因と考えられます。
しかし、最新の世論調査ではバイデン候補の支持率がトランプ大統領の支持率を上回っています。
それにもかかわらず米株高トレンドが続いていることを考えるならば、『バイデン増税』による株安というシナリオが現実となる可能性は、現時点で低いでしょう。
財政リスクに要注意
となると、米株高トレンドを崩す要因として注目すべきは、2番目の大規模な景気対策ということになります。
なぜ大規模な景気対策が株高トレンドを崩す要因になるのか?
それは『財政リスク』につながるからです。
そしてジェイは長い目で考える場合、このリスクが米株高のトレンドを崩す可能性があることを警戒しています
そう考える理由は、アメリカの長期金利がジワジワと上昇していることです。
米金利の動向が焦点
実際にアメリカの長期金利のチャートを見てみましょう。
なお、長期金利という場合、大体が『10年債利回り』のことをいいます。
10年債利回りは住宅ローン金利の基準となるなど、私たちの生活に影響を与える金利でもあります。
アメリカの長期金利チャート
今年の8月以降、ジワジワと上昇し続けていることがわかります。
トランプ米政権とパウエルFRBが実行している大規模な財政&金融緩和政策が景気を回復させる!との期待が金利上昇の背景にあることは間違いないでしょう。
しかし米債市場では別の指摘もあります。それが...
という指摘です。
バイデン候補が所属する民主党は2.2兆ドル規模の追加の景気対策を主張しています。
対する共和党は財政のリスクを意識して5,000億ドル規模にとどめたいと主張しています。
トランプ米政権はというと、当初主張していた1兆ドル前後の規模から1.8兆ドルまで額を引き上げて民主党の譲歩を促しています。しかし、このブログを書いている時点で民主党は応じていません。
追加の景気対策の必要性が迫られたのは、8月に入ってからです。
9月には失業給付金等の政策が期限を迎えることになっていたからです。
そのタイミングでアメリカの長期金利が上昇していることを考えるならば、今後の米債市場で将来の財政リスクが意識される可能性はあり得ることです。
金利には『2つの上昇』がある
金利の上昇には『2つの上昇』があります。それが...
の2つです。
良い金利の上昇
『良い金利の上昇』とは、景気の回復を背景に金利が上昇することをいいます。
このケースでは、米株は株高トレンドを維持するでしょう。
悪い金利の上昇
問題は『悪い金利の上昇』です。
悪い金利の上昇が起こるメカニズムを簡単にいうと...
ということです。
アメリカの信用を低下させる最大の要因は『財政の悪化』です。
バイデン候補と民主党はこの財政を悪化させる巨額の景気対策を実行しようとしています。
また、バイデン候補は今年の7月に、気候変動問題に対処するためインフラ投資に4年間で2兆ドル規模(約220兆円)をあてると表明しています。
環境インフラのみでこの額です。
他のインフラ投資も行う場合、財政赤字はさらにふくれ上がるでしょう。それにともない財政リスクも高まるでしょう。
来年はパウエルFRBの動向に注目
このように考えると、米株が株高トレンドを維持できるかどうかは...
ということが言えます。
パウエルFRBは現在、金利の上昇を抑えるために『超』が付くほどの金融緩和政策を実行中です。
このため、株高だろうが景気の回復期待が高まろうが、長期金利は1.0%以下の水準で低空飛行の状態となっています。
アメリカの長期金利チャート
米国の大統領選挙が終わってから金利が上昇するムードが高まれば、パウエルFRBには長期金利をゼロ%近辺で無理やり推移させる『イールドカーブ・コントロール』という手段も残されています。
なのでジェイは、『パウエルFRBの超金融緩和政策が金利の上昇を抑制する』ことで『米株は株高のトレンドを維持する』というベースシナリオをえがいています。
しかしアメリカの長期金利が、何の前ぶれもなく急上昇する展開が見られるようになったら話しは別です。
突然の金利の上昇は、米債市場がアメリカの財政リスクを意識している危険信号となり得るからです。
このケースが散見されるようになったら、米株高トレンドが崩れる可能性を強く意識すべきだとジェイは考えています。