さて、前回は為替市場に影響を与える材料についてコメントしました。
為替市場は世界最大の市場です。このため世界中のあらゆる材料が為替レートを動かす要因になり得ます。しかし、すべてを把握することは非現実的です。よって、基軸通貨の米ドルを軸に現在の「旬」な材料が何か?これを常に考えることが重要です。
為替市場で今「旬」の材料とは何でしょうか?それは...
FRBによる資産購入です。
この点を考えるためには、まず米国という国がどのようにして経済政策を決定しているのか?この点をおさえる必要があります。
FRBって何?
そもそもFRBって何?と思うひともいるでしょう。
FRBとは、The Federal Reserve Boardの略です。
FRBを日本語に訳すと連邦準備制度理事会です。
簡単にFRBの歴史を振り返ると...
・米国の中央銀行の役割を果たす組織
・設立は1913年
・米国大統領が任命する7人の理事で構成
・連邦準備銀行という12の地区銀行を傘下におさめている
ポイントは最後の項目です。なんでこんなややこしい組織図(FRB⇒連邦準備銀行)になっているのか?中央銀行というからにはFRBひとつで十分じゃん、と思うひともいるでしょう。
それは、米国では地方分権の思想が強すぎることが原因です。FRBという連邦政府のいち機関のみに権限を集中させる中央集権的なやり方を、米国という国は建国当時から拒否してきた歴史があります。このため全米を12の地区に分けて、その地区の経済や景気動向をウォッチするための銀行組織を設立しました。それが連邦準備銀行です。
FOMCって何?
そんなに銀行組織がいっぱいあって経済政策の話がうまくまとまるの?という疑問がありますよね。人間は多く集まれば集まるほど意見の隔たりが大きくなるからです。そこで米国は、FOMCという会合を1年に8回開催することにしています。
今度はFOMCという単語が出てきました。
FOMCとはFederal Open Market Committeeの略です。
日本語に訳すと連邦公開市場委員会です。
具体的に見ていきましょう。
FOMCとはFederal Open Market Committeeの略で、米国の金融政策を決定する重要なイベントです。では決定権は誰にあるのでしょうか?それは...
投票権を持つ7名の理事と5名の地区連銀総裁です。
現在、理事2名は空席となっています。
地区連銀総裁の投票権はニューヨーク連銀を除き毎年入れ替わります。地区連銀の中でもニューヨーク連銀は別格なのです。この点については、機会があればふれたいと思います。さて、2020年は誰に投票権があるのでしょうか?それは...
投票権を持つFRB理事
氏名 | 役職 |
Jerome H. Powell(ジェローム・パウエル) | 議長 |
Randal K.Quarles(ランダル・クォ―ルズ) | 副議長 |
Richard H. Clarida(リチャード・H・クラリダ) | 副議長 |
Leal Brainard(ラエル・ブレイナード) | 理事 |
Michelle W. Bowman(ミシェル・W・ボウマン) | 理事 |
投票権を持つ各地区連銀総裁
指名 | 地区名 |
John C. Williams(ジョン・C・ウィリアムズ) | ニューヨーク |
Patrick T. Harker(パトリック・T・ハーカー) | フィラデルフィア |
Loretta J. Mester(ロレッタ・J・メスター) | クリーブランド |
Neel Kashkari(ニール・カシュカリ) | ミネアポリス |
Robert・S・Kaplan(ロバート・S・カプラン) | ダラス |
以上、理事5名と地区連銀総裁5名の計10名が2020年の経済政策を決定する人物です。FOMCという会合で彼らが議論し、決定したことを連邦準備銀行に指示し、連邦準備銀行はその決定従い行動します。
これら一連の体制(システム)をFRSと言います。
FRSって何?
またまた新しい単語が出てきました。今後はFRSです。
FRSとは、Federal Reserve Systemの略です。
日本語に訳すと連邦準備制度です。
これまで述べてきたとおり、米国の中央銀行にあたるFRBがFOMCという会合を開催し、そこで議論し決定されたことを連邦準備銀行が実行する、という一連の意思決定の体制(システム)をFRSと言います。
現在、FOMCを引っ張るのはFRB議長のジェローム・パウエル氏です。トランプ米大統領から事あるごとに批判されているニュースが流れていますね。しかし、パウエル議長は、現在のコロナショックに対して迅速に対応している優秀なトップです。あのトランプ米大統領とも何とか上手くやっていますしね。そしてこの指揮官が決断したある政策が為替市場、特にドル円のトレンドを大きく左右し、2020年のトレンドも左右することになる、とidMの管理人ジェイは考えています。
その政策とは?!