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前回の記事では、市場の関心がインフレから”雇用”へシフトしていることについて指摘しました。
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【米国株】6月相場で注目すべきこと 前編 市場の関心はインフレから”雇用”へシフト
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雇用関連の指標で、市場の注目度が最も高いのが『雇用統計』です。
最新(5月)の雇用統計は今日発表されます。
その後、米国株(アメリカ株)が大きく動く可能性があります。
後編の今回は、5月の雇用統計ではどの点に注目すべきか?この点についてお話します。
今回のテーマ
5月雇用統計の焦点
この記事の対象となる人
こんな人におすすめ
- 米国株の投資に興味がある人
- 株式投資の経験がない人/浅い人
結論からいいます
結論
- 5月の雇用統計は下振れリスクに要注意
- 悪い雇用統計はグロース株にとって ”良いニュース” になる可能性あり
- 良い雇用統計は米株にとって ”悪いニュース” になる可能性あり
下振れリスクに要注意
まずは、5月の雇用統計の市場予想を確認してみましょう。
カッコ内の数値は4月の結果です。
5月雇用統計の市場予想
今回の予想
- NFP:65.0万人(26.6万人)
- 失業率:5.9%(6.1%)
- 平均賃金:1.6%(0.3%)
データの出所は、大手の金融情報ベンダーのリフィニティブです。
NFPと失業率は前月比、平均賃金は前年同月比となります。
前回の記事からNFPが修正されました。
下振れリスクに要注意
今回の雇用統計では、まず以下の点に注意すべきだとジェイは考えています。
市場予想を下回るリスク
なぜか?
その理由は、今週の1日と3日に発表されたISM指数という指標にあります。
この指数には、製造業と非製造業(サービス業)の2つがあります。
ISM製造業景気指数とは?
・アメリカの製造業の景況感を示す指数のこと
・全米供給管理協会(ISM)が毎月第1営業日に発表に公表する
・製造業300社以上の購買・供給管理責任者を対象に景況感についてアンケートをとる
ISM非製造業景気指数とは?
・アメリカの非製造業の景況感を示す指数のこと
・全米供給管理協会(ISM)が毎月第3営業日に公表する
・非製造業375社以上の購買・供給管理責任者を対象に景況感についてアンケートをとる
ISM(非)製造業景気指数で重要なのは、アンケートの項目です。
アンケートの項目
- 各企業の新規受注、在庫、価格そして雇用など10項目
今回、ジェイが最も注目したのが『雇用』でした。
なぜか?
ISMの雇用指数は雇用統計を予測する際、参考となるからです。
チャートで確認してみましょう。
赤いゾーンが昨年の2~3月にかけて発生したコロナショックです。
その後、大規模な景気対策で雇用指数は右肩上がりのトレンドを描きました。
しかし、直近はその上昇トレンドに陰りが見え始め、5月は製造業、非製造業(サービス業)ともに低下しました。
アメリカの景気は回復しているのに、なぜ雇用指数は低下したのか?
その理由は以下にあります。
雇用指数が低下している理由
- 手厚い現金給付
- 手厚い失業保険
- 職探しの先延ばし
- 育児や介護による強いられた在宅
一番大きな理由は、やはりお金による手厚い保障でしょう。
ただでさえ失業してショックを受けているのに、手厚いお金の保障まであるとなれば、職探しのモチベーションが上がらない要因となるからです。
こういった状況に危機感を持っている一部の州では、手厚い失業給付を取りやめる方針を示しています。
しかし、多くの州ではコロナ対策の失業給付が9月上旬まで続きます。
そう考えると、5月の雇用統計も4月の時と同じく、市場予想を大きく下回る可能性があります。
悪い雇用統計は”良い”ニュース?
5月の雇用統計が市場予想を下回る場合、普通に考えれば株式にとってはネガティブな要因です。
しかしジェイは、グロース株を中心に米国株が上昇すると考えています。
そう考える理由はー
米国株はまだ金融相場の状況にあるから
です。
テーパリングが近づいていることで、これからの米国株(アメリカ株)は間違いなく量的緩和を意識する『金融相場』から、決算を意識する『業績相場』へシフトすると思います。
しかし、米金利の上昇が一服すると、ナスダック総合&100指数が再び反発している状況を考えるならば、米国株は未だに金融相場を意識している状況にあることがわかります。
このような状況の中で、5月の雇用統計が市場予想を下回る内容となればー
FEDが早期にテーパリングをすることはないのでは?
との期待が高まります。
一時的にせよ上の期待感が高まれば、米金利は低下する可能性が高いでしょう。
そして金利低下の恩恵を受けやすいグロース株がー
”悪い” 雇用統計で上昇する
というわけです。
良い雇用統計は”悪いニュース”?
グロース株の下落に要注意
一方、今回の雇用統計が市場予想を上回る場合はー
良い雇用統計が ”悪いニュース”になる
可能性に注意しておくべきでしょう。
この点については、前回の記事の最後でふれましたが、以下の図であらためてお話します。
5月の雇用統計が市場予想を上回る場合、それは景気の回復シグナルとなります。
景気が回復すれば、米金利には上昇圧力が高まることが予想されます。
また、良い雇用統計はテーパリングの観測を高める要因ともなるでしょう。
良い雇用統計をきっかけに上の2つの状況が同時に発生すればー
リスク性の高いグロース株には下落圧力が高まる
ことが予想されます。
良い雇用統計は ”悪いニュース” になる可能性があるということです。
この点を端的に示したのが、上の図です。
資源株にも要注意
また、グロース株だけでなく、資源株を中心にバリュー株も下落する可能性があります。
なぜか?
米金利の上昇はドル高の圧力を高めます。
実際に外為市場でドル高となれば、貴金属、原油、穀物そして木材など、これまで上昇してきたコモディティ価格の割高感が意識されます。
そうなるとコモディティ価格には下落圧力が高まるでしょう。
コモディティ価格が下落すれば、資源株も下落するでしょう。
その影響が他の景気敏感株にも波及すれば、グロース株だけでなくバリュー株も下落する可能性があります。
5月雇用統計の発表は、今晩の9時30分(日本時間)。
今回も大きく市場予想を下回ってしまうのか?
それとも、良い雇用統計が ”悪いニュース" となってしまうのか?
注目です!
まとめ
・米国株の焦点はインフレから”雇用”へシフト
・目先は雇用関連の指標に注目
・悪い雇用統計はグロース株の上昇要因となる可能性あり
・良い雇用統計は米株の下落要因となる可能性あり
注記事項
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