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米国株式の水準は高過ぎるのか?

現在の米国株式市場は期待が先行し株高になっている-
これが前回のお話でした。

今回は米国株式市場の水準について考えてみましょう。

米国株式市場の振り返り

2008年に世界金融危機で暴落した米国株式は、2009年3月に底を打ちました。その後は調整を挟みながら、緩やかな上昇トレンドを描きました。2015年から2016年にかけて上値の重い局面が続きましたが、2017年にトランプ米政権が誕生すると財政政策の期待が高まり、2020年2月まで史上最高値を更新する状況が続きました。

以下は、2007年以降から現在までの米国株式市場のパフォーマンスチャートです。今回はMSCIの米国株式インデックスを採用しました。
赤いゾーンが世界金融金融危機(いわゆるリーマンショック)の時の急落です。
緑のゾーンが上昇局面、グレーのゾーンが踊り場局面です。

米国株式のパフォーマンスチャート

Source: MSCI US Index / 月足(2017年-2020年5月20日

一株当たり利益(EPS)

コロナショックが発生する前までの米国経済は順調に拡大し続け、戦後最長の景気拡大を記録しました。経済が成長するならば株価も上昇する-2020年2月までは、まさに教科書通りの展開でした。

しかし、現在はコロナショックにより多くの人が失業し、経済は停滞しています。その悪影響はこれからもっと出てくるでしょう。このような状況の中で、現在の米国株式市場の水準は高過ぎるのか?低すぎるのか?それとも妥当な水準と言えるのでしょうか?

このことを考える上で重要となるが...

どのような指標で比較するのか?

です。

分析者によって、比較に用いる指標は色々あるでしょう。idMの管理人ジェイは「株価は企業の業績や成長期待を反映した価格」である、という基本を大事にしています。そこで今回は、EPSという指標を対象にします。

EPSとはEarnings Per Shareの略称です。日本語では「一株当たり利益」といいます。これは、当期利益を発行株式数で割って算出されます。分子の利益が大きくなればEPSは上昇します。逆に小さくなればEPSは低下します。

EPSの計算方法

予想EPSでは米株は高すぎる水準

将来の企業収益と株価を予測することで「予想EPS」が計算できます。今回はこの予想EPSと現在の株価水準を比較し、その水準が高すぎるのか否か?この点を判断してみましょう。
なお、株価には機関投資家(プロ投資家)がベンチマークとしているS&P500(SPX)を採用します。

予想EPSとS&P500

予想EPSとS&P500の動向を比較チャートを確認しましょう。

日足(2017年-2020年5月18日)

S&P500に採用されている企業の予想EPSを加重平均した値を緑ラインのチャートで示しました。一方、赤のラインチャートはS&P500の実勢レートの推移です。

まず注目したいのは、2020年はじめ頃までは予想EPS(緑ライン)が上昇基調にあったことです。これは上で述べた米国経済の成長と一致した動きです。一方、S&P500(赤ライン)は米中貿易摩擦ショックやパウエルFRBの性急な利上げ政策により、2018年10月から12月にかけて大きな調整がありました。しかし、予想EPSが示す通り企業業績や成長が続くとの見方から、2019年は株高トレンドへと戻っています。その結果、予想EPSとのかい離が急速に縮小したことがわかります。

次に注目したいのは、予想EPS(緑ライン)とS&P500 (赤ライン)との関係です。
2020年3月11日以降、予想EPS(緑ライン)が急低下しました。コロナショックの影響を考えれば、これは致し方のないことです。当初はS&P500指数(赤ライン)も同じ動き(急落)となりました。

しかしよく見てください。

3月下旬以降、S&P500指数(赤ライン)はV字回復し、現在は予想EPS(緑ライン)よりもはるか上の水準で推移しています。2017年にトランプ米政権が誕生して以降、このような状況は一度もなかったのです。予想EPSは将来の企業業績と成長を予測して算出されます。それが急低下しているということは、将来、企業業績が悪化し成長も止まると市場関係者が予測していることになります。

現在(2020年5月20日時点)の予想EPSは140.665です。この水準は2017年10月の水準となります。この時のS&P500 の株価は2,500ポイント台で推移していました。現在の株価は2,922.94ポイントです。その差は400ポイント以上。この差は、前回コメントした「期待先行」の影響の大きさを示す数値と言えます。しかし、実際の経済情勢で考えるならば...

現在の米国株式市場の株価は高すぎる水準であると言えます。

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